2010年10月24日

リチャード・シンクレア ホームステイ日記 <番外編7>

【 その後 】

リチャードが置いていった虎の子のベースはどうなったかというと・・・
結局3月の来日はしないので送ってくれと!
それから我が家に置いていった手作りCDRをUSAのフェスに出る時にまた送ってくれと・・・
郵送費は払うからと言ってたが、未だに入金はないのです。

【完】
posted by Crescent Label Master at 13:20| 日記

リチャード・シンクレア ホームステイ日記 第8日目

【 10月24日 日曜日 】

1024a.jpg成田発11時頃の便なので、7時前に出発せねばならない。とても朝食は無理なので、妻の作ってくれたおにぎりと玉子焼き、鳥の竜田揚げのお弁当と、魔法瓶の熱いお茶をもって、時間がなければ走りながら車中で食べることにする。リチャードも妻も子も名残惜しそう。リチャードは、妻子の両頬にキッス。動揺する妻に、「これ、イタリア風の挨拶。」すっかりイタリアに行く気だな。家の前で記念撮影をして出発。
荏原から首都高に乗って、来日初日に話題になったレインボー・ブリッジを越え、湾岸戦をひた走る。レインボー・ブリッジを渡ると、感慨深げなリチャード。チビギターは、ボディーの中に梅干や海苔やお茶漬けの素などがギュウギュウ詰めにしてあるので、鳴らすことができない。CDにかぶせたコーラスが続く。
意外に渋滞もなく来られたので、成田空港直前のパーキングで停車して、お弁当の朝ごはんをいただく。いつものように、美味しい美味しいと完食。

9時前に空港着。エール・フランスのカウンターで、長々列に並んで手続きの順番を待つ。もちろん待っている間も小さい声で歌っている。
「・・・や、小さなお子様をお連れの方は、初めに・・・」と、なにやら優先手続き用のアナウンスが英語で流れたあと、
「・・・and musicians first・・・」などと館内放送の声色を真似て呟くリチャード。ウへへへと大笑い。

やっとリチャードの番に。重いベース用のハードケースはうちに置いてきており、2台のベースはソフトケースに入れて紐で縛って一体化させてある。それに加えて、怪しい沖縄風楽器類の箱が一つ。ボストンバッグが一つ。チビギターは背負っているので、これら3品を荷物室へ預けることに。すべて計りに乗せると、大幅な過重量。カウンターのおねえさんをなだめてもすかしても、ちっともまけてやろうということにならず、3万円以上の過重量料金を請求されることに。私は「仕方ないなあ。」と諦めたが、リチャードは諦めず、意を決して2台のベースをばらすと、父親手製の大事な方を私に預け、更に沖縄の鐘2個、コーラスペダル、履いていた古い靴などを荷物から抜いて、残りを再度計りに・・・。それでも1万3千円ぐらいの過重料金を取られた。
「残りはどうするの?」
「悪いが預かっておいてくれ。」
「ベースも?」
「大丈夫、どうせ3月に来ることになるし。」
というわけで、虎の子のベースや、その他の重いものは、私が家で保管することになった。

カウンターでの交渉で、二人とも喉が渇いてしまったので、バルコニー状になっている上の階へ階段で上がり、そこのカフェで冷たいコーヒーを飲むことにした。道々ブツブツ文句を言いあう我々。
「まったくフレンチ・エアーはPOOHだ!」
でも、手続きが終わり、あとは乗るだけとなってすっきりしたのか、上機嫌なリチャード。
「じゃあ、僕が買ってくるよ。アイスコーヒーでいい?」
「ええ、お願いします。」
店の外のテーブルに荷物を置いて待っていると、やがて「おーい」と、私の名を呼ぶリチャードの声が、赴くと、眉間にしわを寄せて怒っている。
「頼む、代わって注文してくれ。通じないんだよ!」
ニコニコ顔で出てきた御用聞きのような青年とやりとりする。
「アイスコーヒー2つでいいんだけど?」
「当店ではアイスコーヒーではなく○○となりますが宜しいでしょうか?」
「要するにそれはアイスコーヒーと同じなんでしょう?」
「ええ、まあ。大きさは?」
「レギュラーでいいよ。」
「レギュラーというのはございません。○○とtallと、××になりますが?」
「だったら真ん中のトールでしょうが。」
「かしこ参りました。ミルクとガムシロップは?」
「片方は両方必要で、片方はミルクだけ。」
「かしこまりました。」
手を上に挙げてあきれるリチャード。
「じゃ、払ってくる。」
大丈夫か見ていると、注文をとった青年に払おうとしていたリチャードが、店の反対側の端を指され、会計はあちらでと言われている様子。列に並んで順番待ちさせられているリチャード。
会計が終わり、怒るリチャード。
「信じられんぜ。全世界、どこへ行ってもシンプルに『Iced Coffee two』で通じないところなんてないぞ。それに、どうしてアイスコーヒー頼むだけなのに、あんなにたくさんのことを選ばなけりゃいけないんだ!?」
しかも、やってきたアイスコーヒーは両方ともガムシロ&ミルク入りだった。
後ろでは、高校生ぐらいのアルバイトの女の子が、吉本興業系の甲高い声で注文を伝えている。それも、顔が赤らむほどのジャパニーズ・エセ・イングリッシュを混ぜて・・・「ハイ、アイスラテトールツー入りました。云々・・・」
生粋のイングランド人(しかも英語の発音がきれいなケント州)のリチャードの英語がまったく受け入れてもらえない一方で、わけのわからぬエセ英語的言語がとびかうこの空間のおかしさに、つい苦笑。
「ねー、聞きました?『アイスラテトールツー』だって!ラテはイタリア語だし、トールツーって、tallとtwoのことみたいですよ。」
と、女の子の吉本声を模写すると、ようやくリチャードも大笑い。

パスポート・チェックなどの時間がかかりそうなので、40分前には出発口に行くよう降りていくと、ものすごい人の列。まさかと思ったが、手続きに並んでいる人の列が、階上のここまで続いているのだという。両手を握っての丁寧なお礼の挨拶。さすがは紳士の国の住人。仕方なく並んでもらい、へザーにメールで送る為の最後の写真を撮るよ、と声を掛けると、後ろに並んだ若い日本の女の子たちを引き寄せ、「一緒に撮ろうよ。イエーイ。」

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本当は最後に、「It didn't matter anyway...We'll meet again some other day...」などと歌って別れようと思ったのだが、リチャードはおねえちゃんたちに「どこ行くの?」などと聞いていて忙しい。
「じゃあ、行くね。さよなら。」
「本当に色々ありがとう。3月に戻ってくるから。そいつ(ベース)の面倒宜しくね。」と、簡単な挨拶をして、駐車場へ向かった。
リチャード父作の重いベースや怪しい鐘を持って・・・

さらば、リチャード。
機内では歌うなよ。
posted by Crescent Label Master at 13:19| 日記

リチャード・シンクレア ホームステイ日記 第7日目

【 10月23日 土曜日 】

いつものように、シャワーのあと和朝食。車で岡本民家園へ。もちろんチビギター付き。車中例によって弾き語りは続く。日本の古民家は、グレート・ブリテン〜アイルランドのそれと、非常に似ている点が多い。特に藁屋根の張り方がそうで、リチャードもこの意見には同意していた。ただし、神棚、障子や囲炉裏といったものは、日本独特の文化なので、リチャードの関心を引く様子。煙たなびく囲炉裏端に座って、チビギターの弾き語りを始めた。当日民家園を管理していた老齢の女性が、興味深げに聴き入っていたのが印象的。

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縁側に供えられた十五夜?のお供え餅が気になって仕方ないリチャード。
「イングランドでは『神は唯一絶対』のようだけど、日本は多神教的なところがあって、何千年と生き続ける樹木や、満月などの神秘的な自然現象にも『神』を感じて、こうやって供物を捧げてお祈りをする文化があるのです。この餅や植物は、月の神に捧げられているのです。。。多分。。。そして、この餅の数に意味があって、月の満ち欠けの形に応じて歴で『第何日目の夜』というふうに決められているのですが、餅の数がその数にそろえられているはずです。。。多分。。。」
「そうなのか・・・」
私のいい加減な説明に感心する。

1023b.jpg 民家園の裏山で、小さな竹の木を引っこ抜くリチャード。持って帰って植えるのだという。裏にある井戸や、鳥小屋など、日本のノスタルジーを充分感じたところで、一旦帰宅して、近所でランチをとることに。
「和食では、鮨、天麩羅、鰻、蕎麦、など、大体なんでもありますが、何を?」
「天麩羅。」
ということで、「与喜(天麩羅)」でランチ。本当に天麩羅が好きな人だ。
ビールとお酒で昼間からいい気分に。

完食後、靴を買いにABCマートへ。丁度手ごろで気に入ったものが手に入り、よかったよかった。その後、サングラスを売っている店を数件回るが、気に入ったものがなく、これは諦めることに。一昨日入った山野楽器を再来。チビギターの弦巻が今ひとつ気に入らないようで、もっと緩まないしっかりしたのに取り替えたいという。店側は、用意できる3種類の弦巻を出してくれたが、どれもが普通の6弦ギター用で、チビギターの小さなヘッドには大きく重過ぎるという判断となり、これも諦め。
さすがに、最終日で疲れているらしく、「これから御茶ノ水へ行こう!」という話にはならない。一昨日サインをもらっていた女の子と、他の店員さんが、CDを持ってやってきた。
「お店にキャラヴァンが一つだけありました。」
見ると、私が見たことのないベスト盤。リチャードは知っていたようで、裏返し、写真を指差して、
「これが僕だよ。この頃はまだ髪があったけどね。クククッ」

日のあるうちに、自宅前で、何カットかデジカメや6×6で自然光ポートレイト撮影。イタリア南部のプーリア(長靴の踵の辺り)に移住を希望しているリチャードは、イタリア車が気に入ったらしく、「このAlfa Romeoと一緒に撮って。」と希望。

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「プーリアには、円錐形の屋根で声がいい具合に反響するトゥルリっていう面白い形の建物がいっぱいあってね。僕もヘザーも気に入ったんだよ。ほら、『Gray & Pink』のジャケットに描いてある可愛い家があるでしょ。丁度あんな形。あっちに移住できれば、毎日お日様にあたれるし、ヘザーの陶芸も自宅でできるようになるし・・・」

どうも、イギリス人は歳をとると、南へ南へと行きたがる傾向がるように思う。スコットランドに住んでいた私の友人は、冬の暗い雲、雪やみぞれ、強い風にうんざりして、イングランド南部のソールスベリーに引っ越したし、スペインのマラガ〜コスタ・デル・ソルや島(マヨルカ島、イビサ島、フォーメンテラ島)には、引退したイギリス人が大勢住み着いている。そういえば、マヨルカやイビサはケヴィン・エアーズやロバート・ワイアットの、フォーメンテラはピート・シンフィールドゆかりの島だったな。
リチャードは、英国内では比較的南で暖かなカンタベリーに住んでいても、やっぱり「もっと南。」ということになるのだろうか・・・とすると、「京都に住みたい。」と言っているデイヴ・シンクレアは、かなり珍しい部類に入るようだ。

その後は、近所のスーパーで、海苔、お茶漬けの素、切干大根、梅干、味噌汁(ドライ)などを大量購入。明朝早いため、すぐに楽器の間に埋めてパッキング。すると、暗くなり始めた時間帯に、大きな揺れが。テレビで震度3の表示が出る。急いで階下におりてみると、リチャードが困惑気味。
「何これ?」
「これが地震だよ!」
「そうか、照明が揺れてるんで風が入ったのかと思ったが、自分も揺れてる感じで妙だったんだ。これが地震か!」
そう話している最中に第二震。その後少し時間を置いて大きな揺れが更に1回。
今回の来日で、巨大台風2個、大地震3揺れを体験したリチャード。

1023d.jpg 夕方、家族3人とリチャードで、昨日予約しておいた「しゃぶ玄(しゃぶしゃぶ)」へ。紙のように薄く切った牛肉は、あちらではない物なので、興味津々。コツを教えたら、どんどん胡麻ダレとポン酢を使い分けて食べていく。箸を使うことにも全く危なげなく、皿や小鉢を左手で持ち上げて自然に食べている。
「和食のエキスパートになりましたね。」
「どうもありがとう。でもまだ生徒の段階だね。」
2時間以上かけて、ゆっくり食べ、飲み、語らい、笑い、皆心置きなく最後の晩餐を楽しんで帰宅。

へザーから「壊滅的な地震が日本であったとBBCが流しているが、皆大丈夫か?」と、メールで安否情報の問い合わせ。
「関係者は皆、震源地(東京の北300km)から離れているので大丈夫。ただし、震源地周辺は大変なことになっている可能性があり、住人たちのことをとても心配している。」と、返事を打っておく。

テレビは地震関連の番組を緊急報道。被害状況が気になって仕方がないが、明日は朝早いので、早めに就寝。
posted by Crescent Label Master at 13:06| 日記