2010年11月07日

『9フィートのアンダーグランド』の真相

【 Nine Feet Underground の真相 】

 LPのB面すべてを占める大曲のタイトルである“Nine Feet Underground”は、当時デイヴが住んでいたコンドミニアムが地下一階で、正に “9 feet underground” だったことからつけられました。

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Lexington House © AADBEG Ltd.

この奥に、階下に降りる階段があります。


 このコンドミニアムは、サイモン・ラントン・スクールの近くにあり、“Lexington House”といいます。当時の家のオーナーはトニー・コーで、デイヴが借りていた部屋には従兄弟のナイジェル・ブローがしょっちゅう遊びに来ていました。

 ナイジェルは英国で超有名な17世紀のバロック作曲家兼オルガン奏者、ジョン・ブロー(John Blow)の子孫で[*]、デイヴのお母さんの兄の子という関係の従兄弟です(デイヴ自身もジョン・ブローの血を引き継いでいるということになります)。ナイジェルはフロッグ(Frog)というバンドを率いてキーボードを演奏し、ドイツまで遠征したことがあるということです。

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Nigel Blow © AADBEG Ltd.

 父親同士が兄弟である従兄弟のリチャード・シンクレアとは別に、もう一人、デイヴにミュージシャンの従兄弟がいたことは、ほとんど知られていない事実です。

[*]John Blow
http://www.classicalarchives.com/composer/2203.html

 ナイジェルがあそびに来たときに、一台のピアノを二人で弾いたりしてジャムっていたそうです。実は、“Nine Feet Underground”の最初の小曲のメロディーは、こうやって2人でジャムっているときに偶発的に出てきたフレーズを、デイヴが膨らませていって作曲したものなのです。
 影の作曲協力者ナイジェルに敬意を表して、デイヴはその小曲のタイトルを次のようにしました。“Nigel Blows A Tune”。もちろんこれが、「Nigel Blow」という彼の氏名と、「Nigel が和音を吹いたよ」という意味のWミーニングであることは、言うまでもありません。

 フールズメイトだったかマーキーだったか忘れましたが、以前、ジェネシスの Foxtrot の“Super's Ready”に関する記事の中で、「プロデューサーのデビッド・ヒッチコックが、CARAVANの“Nine Feet Underground”でやった、小曲をツギハギして大曲にまとめ上げる作業が役立った。」という要旨の事が書かれていましたが、メンバーたちに直に聞いたところ、あまりに長い曲のため、録音を5つのパートに分けて行い、後にヒッチコックがそれらをつなげた事実はあるけれど、ヒッチコックがオリジナルの仕事をした事実はなく、あくまでもすべてのスコアはデイヴの手によるものであるとのことでした。
posted by Crescent Label Master at 10:39| コラム

「グレイ&ピンク」A面からピアノワークスへ

【 In The Land Of Grey And Pink A面から Pianoworks へ 】

 アルバム In The Land Of Grey And Pink は A面4曲のうち、1、2、4曲目がリチャード・シンクレアの作で、3曲目のみパイ・ヘイスティングの作です。

 一般的にデイヴの鍵盤奏者としての特徴は、B面で展開されるような、ファズで歪ませたハモンド・オルガンのサウンドにあるとされています。
 デイヴのオルガンが、ソフト・マシーンのマイク・ラトリッジのオルガン(ハモンドではない)サウンドと双璧をなす、カンタベリー音楽のアイコンであることに異論はありません。しかし、後のデイヴの人生を見てみたときに、1980年〜2005年の間、ハーン・ベイでピアノ店を経営していた事など、鍵盤楽器としてのピアノへの傾倒ぶりは明らかです。
 そう、デイヴがその独特のピアノ・・テクスチャーをはじめて披露したのが、このアルバムA面4曲目、“In The Land Of Grey And Pink”中間部のピアノソロだった訳です。

 点描的で流れるような単音、艶があって踊るような跳ねるようなパッセージ・・・もう天性のものとしか言いようのない、極上のセンスの運指がそこにはありました。
 以前リチャードとこのアルバムのA面について議論したことがありますが、「あの曲のピアノソロこそがA面のハイライトである。」ということで意見が一致したことを覚えています。

 実を言うと、このたび“Pianoworks”シリーズを企画したのは、あのピアノソロを拡大、連続させ、アルバム丸々ああいう音世界で埋め尽くしたい、という私の思いからでした。それが叶ったかどうか?  
評価はリスナーの皆様にお任せしますが、プロデューサーとしては結果に大変満足しております。私の中では、大好きなメンデルスゾーンの『無言歌集』を凌駕したピアノ曲集になりました。

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posted by Crescent Label Master at 10:26| コラム