2010年11月14日

Matching Mole ~ Stream

 キャラヴァンでは順調なベンド活動を送っていましたが、代表作である3rdアルバム、「グレイとピンクの地」の完成後、デイブはバンド結成時の目的を達したと感じたのと同時に、音楽生活全体がやや停滞していると感じ、バンドメンバー以外の人々からの異なったインスピレーションが必要であると考えて、1971年8月、キャラヴァンを脱退しました。

 バンドを脱退して1週間後、ある男がデイブに電話をしてきました。デイブの脱退をメディアで知って電話をしてきたのだそうです。その男の口調は実に軽いノリで、ともすればシリアスな雰囲気だったキャラヴァンのメンバーとは、対極をなす雰囲気を醸し出していたそうです。
 「ハイ、デイヴ!僕はジョン・マーフィーといいます。ギターやベース弾いたり歌ったりするので一緒にやらない?」 これがその後数年間ソングライティングをするときの相棒、ジョン・マーフィーとの最初の接触でした。

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DSとJMが初めて顔を合わせたパブの前で © AADBEG Ltd.


 その日の夜、カンタベリーのパブ(Seven Stars Pub)で待ち合わせをした二人ですが、ジョンはギターを持ってきており、人目もはばからず店内で演奏を始めました。機関銃のように早い口調、止めどもないジョークとジェスチャー。その陽気な人柄にデイヴは大いに救われたといいます。

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John Murphy © AADBEG Ltd.

 二人は今でも本当に仲が良く、後日デイヴとジョン宅に伺った際にも、まるで犬がジャレ合うようにしていたことが印象的でした。デイヴは、自分とジョンのことを漫才師のようだ、とも言っておりました。Boke & Tsukkomi なんだそうです。

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Dave Sinclair & John Murphy © AADBEG Ltd.


 デイヴの曲にジョンが歌詞をつける共同作業が進む中、ジョンが結婚し新婚旅行に出かけることになりました。彼の姉が住んでいる南ポルトガルのファロ(Faro)という街にしばらく滞在すると聞いていたデイヴは、曲につけられた歌詞の一部を変更したかったので、急いでジョンと会わねばなるまい、と考えたのでした。
 なんとデイヴはリュックサックに荷物を詰め、ジョンの書き残した不十分な住所を頼りに、ヒッチハイクでファロに向かったのでした。ほとんど睡眠もとれない状態で、フランス、スペインを横切り、8日後にファロにたどり着きました。何とか街中で彼の姉宅を見つけ、デイヴがドアをノックしたのです。
 ドアを開けたのはジョン・マーフィーでした。8日間ほぼ飲まず食わずで、シャワーも浴びられなかったデイヴの姿を見た彼の非常に驚いた(引きつった)顔を見て、デイヴは考え直したそうです。「ダメだダメだ、これはジョンのハネムーンなのだから、ここに来てはいけないのだ。」と。

 しかし、ヘトヘトの状態ですぐに帰れるはずもなく、2〜3日そこに滞在させてもらっていたところ、不思議なことにイギリスからデイヴに手紙が届いたではないですか。そこにはこんな文句が書いてあったそうです。


Come back !
Your country needs you.

From  Robert Wyatt


 こうしてデイブはジョンとのユニットとは別にロバート・ワイアットの新グループ、マッチング・モール(Matching Mole)に参加することになったのです。(デイヴがマッチング・モール参加のためにキャラヴァンを脱退した、という記事をよく目にしますが、それは事実と反しています。)

 のちにデイヴとロバートがこの件について話をしていましたが、一体どうやってロバートがポルトガルでのデイヴの宿泊先を知ることが出来たのか?二人の中で話題になっていました。どうやらデイヴが発つ前にファロのアドレスをカンタベリーの友人に教えておいたのを、ロバートが手繰って入手した、という事だったそうです。

 ところで、マッチング・モール1stアルバムA面1曲目、「オー キャロライン(O Caroline)」はカンタベリー音楽の中でも、最もファンに愛され続けてきた、シーンを代表する名曲の一つです。もちろん作曲はデイヴ・シンクレア、ヴォーカルがロバート・ワイアット。

 あれから約39年、「オー キャロライン(O Caroline)」以来となる、デイヴ・シンクレアの作曲でロバート・ワイアットが歌う新曲を、やっと皆様に届けることができることとなりました。製作者としては、感無量といったところです。

 Crescent Label第2弾、『Stream』のリリースまで、今しばらくお待ち下さい。
posted by Crescent Label Master at 04:31| コラム